教職員インタビュー

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第1回 教員インタビュー  小倉 慶郎 先生

2013年5月9日(木) 英語担当教員へのインタビュー
20130509

高等教育推進機構
外国語教育センター長
小倉 慶郎 教授

こんにちは。現代システム科学域環境システム学類2年生の菊田美月です。
私たち学生FDスタッフは“大学全体をより良いものにしていこう”というコンセプトで活動しています。そういったコンセプトを元にスタッフ同士で話し合いを進めていく中で、大学の英語教育は高校までの英語教育と違って、目的や方向性がよくわからず、どう学習していけばいいのか分からない、といった意見が出ました。実際、大学に入学してから、高校と大学の違いに戸惑ったり、“これからは英語が重要だ”とわかってはいるけれど、どう重要なのか、まず何をすればいいのかわからなかったり、という人は多いのではないでしょうか。そこで、今回私たちは、英語の授業を受け持っていらっしゃる小倉慶郎先生にお話を伺いました。
ぜひお読みください。

 

英語学習の重要性について教えてください

■英語はもはや英米だけの言語ではない
英語は、もともとイギリスの言語です。しかし大英帝国が植民地を作るにつれて世界中に広まっていきました。第二次世界大戦後のアジアでは、英米の植民地から独立した国々(インド、シンガポール、マレーシア、フィリピン等)では、英語が公用語として使われていましたが、それ以外の地域ではそれほど使用されていたわけではありません。ところが、20年程前から、インターネットの台頭とともに、英語が徐々に「国際共通語」の位置を占めるようになりました。今は世界中どこの国でも、大学生は流暢に英語を話せるようになってきています。この速度は恐るべきものがあります。1990年頃に、旧ソ連や、中国の人に英語を話しかけても全く通じなかった記憶があります。

 

■国際共通語となった英語
今はロシアの大学生は皆英語を流暢に話せますし、中国本土の大学生も、驚くほど上手に英語を話します。タイなど
アジアの多くの高等教育機関で、英語で授業が行われるようになり、この傾向は全世界に及んでいます。20数年前までアジアで英語が流暢に話せるのは、英米の植民地の人々に限られていたわけですから、劇的に状況が変わってきているのです。旧ソ連時代にロシア語の影響が強かった地域や、台湾、韓国でも、今の大学生は驚くほど流暢に英語を話します。もちろんヨーロッパの人々も当たり前のように英語を話します。スペイン語圏の南米でも大学生の英語力が非常に上がってきています。日本も昔よりは英語運用能力が向上したことは間違いないのですが、他国の変化が急速で、現在、英語力の点では、日本は、アジア、世界で取り残されている状況なのです。

 

■英語は学術・ビジネスの世界共通語
今や英語は“ビジネス”と“学術”の上で世界共通語になっています。中世のヨーロッパでは、ラテン語が学問の共通語として使われていたのですが、現在の英語は、その当時のラテン語よりもはるかに影響力の強い言語ですね。たとえば、韓国人と日本人、日本人とフランス人がビジネス取引をする時、普通、英語でやるんですよ。研究論文も、フランス人やドイツ人でも、英語で書くようになっています。そうしないと世界の人と共通の議論ができないからです。フランスやドイツといえばヨーロッパの中では英語の抵抗勢力ですが、大学・大学院では英語で授業を提供するよう迫られています。スペイン語圏は、以前は英語が通じない地域の代表だったのですが、今では、スペイン語と英語の両方を話せる大学生が急増しています。

 

英語力アップのために、どんなことが必要ですか(TOEIC200点アップ、他)

府大を徹底的に活用しよう!
皆さんは、府大に少なくとも4年間いるわけです。大学院へ進む人はさらに2~5年いることになるでしょう。府大生は府大の学費を払っているわけで すから、まず府大を徹底的に活用することを考えてもらいたいですね。語学をできるようになるためには、できるだけその言語に接するようにする必要があります。

 
短期留学・長期留学制度
“府大を徹底的に活用する”というのはどういうことか説明しましょう、まず、府大にはアメリカ・イギリス・オーストラリアなどへの短期・長期留学 の制度がありますよね。生協なんかと比べて高いんじゃないかと思われるかもしれませんが、例えば、短期留学を担当している徳永アン先生はEnglish Seminarで、事前に15回の授業を行い留学準備をしてくれます。わからないことがあれば聞くことができます。事前準備やその後のサポートを含めて “活用”してもらいたいです。みなさん、“府大を積極的に活用する”という前向きの姿勢がなくて、“単位のために英語の授業を受けている”という受け身の 姿勢が強いように思います。

 

English Seminar
今年からEnglish Seminar というテーマ別の英語授業が始まりました。これは2年次~4年次対象の自由科目で、学域・学類に関係なく、好きな授業を何回でも受けられます。ブリトン先 生や徳永アン先生も担当されていますし、他の英語の先生も担当されているので、English Seminarも活用してもらいたいです。

 

 ■CALLシステム支援室
B3棟3階にあるCALLシステム支援室が、5コマ目に講座を開いています。担当している先生はTOEIC 990点満点の先生で、TOEIC講座・発音講座などがあります。
7月からは、TOEIC TEST対策e-learningコースウエアも始まります。すべて無料なので積極的に利用してもらいたいですね。あと、後期にはブリトン先生担当のEnglish Cafeが週2回開かれます。英語力の向上だけでなく、府大で学ぶ外国人留学生と知り合いになる場としても活用してもらいたいです。

 

 
通常の英語の授業の活用
もちろん、通常の授業や先生もできるだけ活用しないといけません。なんとなく単位を取るだけではなく、できるだけその授業を活用する、先生に質問 しに行く、という姿勢が大事です。オフィスアワーもありますし、質問しにいって先生が嫌がるわけないですから。ネイティブの先生なら、毎回英語で質問する だけでも皆さんの英語力が磨かれますよ。


TOEIC
全学TOEIC IPテストは去年から始まったのですけれど、これは自分の英語力を知るのに最適です。TOEICのスコアは就職や大学院進学の際にも必要になります。昨年 度の例を見ると、1回目の受験率は高いのですが2回目は受験率が極端に低いんですよ。これは勿体ない話です。大学からのサポートによって無料か非常に安い 料金で受けられるのですから、きちんと受けてもらいたいです。皆さんの英語力の分析まで書いたスコアシートももらえるんです。時々「TOEIC IPのスコアは就職には使えない」というウソを言う人がいますが、そんなことはありませんから、信じないようにしてくださいね。TOEIC IPのスコアがエントリーシートに書けない、就職の時に使えないということはありません。特別な公的試験で、「TOEIC IPは不可」とでも書いていない限り有効ですよ。就職に関係ないからIPテストは受けなくてもいいというのは完全にデマです。まず現時点での実力を知る意味でも、IPテストは必ず受けてもらいたいですね。

  

無料の英語教材について
無料の英語教材はいろいろ手に入ります。今、NHK語学番組はインターネットで無料で聴けるようになりました。もちろん、テキストは買わないといけませんが。また、NHK Worldと いうインターネットの英語ニュースもあります。昔は、日本は海外からの情報を一方的に受けるばかりだったんですが、今その状況は変わってきていて、NHK が率先して日本の情報を英語にして海外に発信するようになっています。日本のテクノロジー、工業製品、アニメなどは海外から注目されていますし、日本の情 報はどんどん海外に配信されるようになってきているんです。こうしたニュースは無料で聴くことができます。そういった無料の教材を活用して学習量を増やす のも重要です。

 

English Cafe
English Cafeで は府大に来ている留学生とも交流できます。留学生と友達になれば、日本と同じ、英語が第一言語でない国の大学生の英語レベルがわかって“こんなにできるん だ”と驚くと思います。Facebookを使って積極的に外国の友達を作り、英語でメッセージをやりとりするのもいいでしょう。また、Skypeを使って 無料で海外の人たちとお話ができる時代になっています。
 
大阪府立大学の英語授業について、具体的にはどういうものですか

府大の英語授業
大学の英語教員にはそれぞれ専門があるので、専門分野を活かして授業をしている先生が多いと思います。高等教育推進機構ではAcademic English という科目を提供し、将来、専門もしくは仕事で英語を使う基礎固めをすることを目標にしています。リーディングが専門の先生はリーディングに特色のある授業をしていると思いますし、僕は通訳・翻訳が専門なので通訳訓練法を活用して、実用的な英語運用能力をつけることを意識して授業をおこなっています。

 

Academic Englishとは
今まで1・2年生の英語教育は、教える内容が専門につながらない、という問題がありました。例えば、旅行英語が必要なんじゃないかとか、もっと日常的な英語が必要なんじゃないかとか。けれども1・2年の時にそういった英語をやっても、3・4年生では各研究分野の専門文献を読んで発表しなくてはならないんです。この二つの間には全く繋ぎがなかったんです。また、今年の4月から、高校では「コミュニケーション英語」が始まって、コミュニケーション中心の英語授業をするようになっています。Academic Englishは高校での学習内容を受け継いで、将来研究・仕事の場で英語を使うことに向けて基礎を作る、という接続意識をもった英語の授業なんです。

 

学生のうちにしておくべきことを教えてください

学生時代に英語をしっかり勉強して、将来国際的に活躍できる人材を目指してもらいたいですね。そのためには、具体的な目標を決めて勉強することが 大切です。卒業までにTOEICは何点取る、海外のインターンシップに行く、A企業に行きたいので、海外営業部に配属されるためにはTOEIC何点必要だからそれを目指す。何でもいいんですが、具体的な目標を設定しましょう。なんとなく“英語できるようになりたいな”ではモチベーションとして非常に弱いので長続きしません。できるだけ強いモチベーションが出るような目標がいいですね。「外国人の恋人作りたいな」とか……ちょっと違うかな(笑)。まあ、実現できなくてもいいから、はっきりとした目標設定が重要です。そうすると、勉強の仕方や生活の仕方が、がらっと変わってくるんですよ。これはもう自分で目標を決めないといけないです。自分で目標設定できないのであれば、とりあえずEnglish Cafeに出て留学生と友達になってみるとか、短期留学とまでいかなくても休暇中に海外旅行に行くとか、モチベーション作りから始めるといいかもしれません。

 

先生から学生に向けてメッセージをお願いします

『頑張ってください!』昔と違い、大学に入ったら勉強しなくてはいけない時代になってきているので……。
語学は必須です。4年間も大学にいるわけですから、府大を活用し、 空き時間に語学勉強すればいいんです。空き時間がないということはおそらくないので、ちょっとした空き時間や空きコマ、通学時間、今まで無駄に過ごしていた時間の半分くらいでも、今まで話したことを参考に勉強して、国際的に活躍できる人材になれるように努力してもらいたいと思います。

 

インタビューを終えて(学生スタッフより)

 ひとことに“府大を徹底的に活用する”と言っても、府大内にこんなにもさまざまな方法があるとは知りませんでした。インタビューを通して、英語がどうして重要なのか、どう勉強していけば良いのか、を具体的に教えていただくことができたと思います。ただ漠然と英語ができるようになりたいなと思うのではなく、 具体的な強いモチベーションに繋がる目標を持つことが大事なのだと感じました。また、通常の英語の授業も受け身ではなく、しっかりと積極的に参加していかなくては、と思います。小倉先生、とても貴重な、そして良い刺激となるお話を、ありがとうございました。